公開日:2023年5月17日 /最終更新日:2024年7月24日
これ、もしかして下請けいじめ?
中小企業の経営者の皆さん、取引先から不当な要求や圧力を受けていませんか?
もしかしたらそれは下請けいじめと呼ばれる違法行為かもしれません。
下請けいじめとは、発注側の企業が受注側の企業に対して、自分たちの優越的な地位を利用して、不利な取引条件や無理難題を押し付けたり、代金の支払いを遅らせたり減額したりすることです。
下請けいじめは中小企業の利益や経営を著しく害するだけでなく、公正な競争を阻害することにもなります。
そこで日本では「下請代金支払遅延等防止法」(以下「下請法」という)という法律で下請けいじめを禁止しています。
しかし残念ながら下請けいじめは今でも多く発生しています。
特に近年はコロナ禍や原材料費の高騰などで経営が厳しくなった大企業が、コスト削減や労働時間短縮のしわ寄せを下請け先に押し付けるケースが増えています。
そこで今回は下請けいじめにあったときの対処法についてご紹介します。
下請けいじめは決して我慢すべきことではありません。
自分の権利を守るためにも、適切な方法で対応しましょう。
下請けいじめの具体例
まずは下請けいじめに該当する具体例を見てみましょう。
下請法では以下のような行為が親事業者によって禁止されています。
- 受領拒否:発注した物品や役務の受領を拒否すること。
- 支払遅延:物品や役務の受領後60日以内に定められた支払期日までに代金を支払わないこと。
- 減額:発注時に決定した代金を減額すること。
- 返品:不良品ではない物品や役務を返品すること。
- 買いたたき:市場価格と比べて著しく低い価格で発注すること。
- 購入・利用強制:自分や指定した第三者の製品やサービスの購入や利用を強制すること。
- 条件変更・やり直し:発注後に無理な条件変更ややり直しを要求すること。
- 早期決済・相殺:有償で支給した材料等の早期決済や代金支払いとの相殺を迫ること。
- 割引難手形:割引が難しい手形で代金支払いをすること。
- 利益供与:自分のために金銭や役務提供などの経済上の利益を要求すること。
- 報復的取引中止:下請事業者が自分の行為を監督官庁に通報した場合などに、取引減少や取引中止などの報復的措置を取ること。
これらの行為は親事業者が悪意があるかどうかに関係なく、違法行為です。
また下請事業者が了解していたとしても、違法行為は消えません。
下請けいじめの対処法
ではこれらの行為にあった場合はどうすればよいでしょうか?
一般的には以下のような対処法があります。
- 交渉:まずは担当者やその上長レベルで交渉してみましょう。
親事業者も下請法違反に気づいていなかったり、誤解があったりする可能性もあります。
交渉する際は証拠資料(契約書や見積書、納品書等)を用意しておくと有効です。
また交渉内容はメモや録音等で記録しておくと良いでしょう。
交渉が難しい場合は、中小企業相の作成した「価格交渉サポート動画」 や「価格交渉ノウハウ・ハンドブック」 などを参考にしてみましょう。 - 相談・調停:交渉がうまくいかなかった場合は、専門家や第三者機関に相談してみましょう。
中小企業庁では「下請かけこみ寺」という相談窓口1 を設置しています。
この窓口では、無料で相談員や弁護士からアドバイスを受けることができます。
また「マンガで読む! 価格交渉サポート事業個別相談事例集」 や「ポイント解説下請法」 なども参考になります。
さらに裁判所では「企業間取引等調停」という紛争解決手続き(ADR)2 があります。
これは裁判よりも低コストでスピーディーに和解できる方法です。 - 通報・訴訟:相談・調停でも解決しなかった場合は、公正取引委員会に通報したり、損害賠償請求訴訟を起こしたりすることも考えられます。
ただしこれらは時間や費用がかかるだけでなく、取引関係が悪化するリスクもあります。
よく検討してから決めましょう。
下請けGメン
最後に「下請けGメン」という言葉を聞いたことがありますか?
これは中小企業庁が配置している取引調査員のことです。
彼らは下請け事業者を訪問して、取引の実態や悩みを聞き、適正な取引に向けた助言や指導を行います。
また下請法違反の事例や声を政府の基準改正に反映させるなど、下請け事業者の味方となってくれます。
下請けGメンは秘密保持を前提としてお話を伺うので、安心して相談できます。
もし下請けGメンから訪問されたら、積極的に協力しましょう。
また自分から下請けGメンに相談したい場合は、中小企業庁の担当課に連絡してみましょう。
まとめとそもそも論
今回は、下請けいじめにあったときの対処法についてご紹介しました。
下請けいじめは法律で禁止されており、自分の権利を主張する方法もあります。
しかしそれだけでは問題が解決しない場合もあります。
そんなときは弁護士に相談してみることも一つの方法です。
弁護士は親事業者と交渉したり、必要に応じて裁判所や公正取引委員会への手続きを代行したりします。
また弁護士は守秘義務があるので、安心して相談できます。
またそもそも論ですが、「下請け」と侮られてしまうのは交渉力が弱いということが挙げられるのかもしれません。
規模を拡大することで交渉力を上げることも考えてみてはいかがでしょうか?
同業他社をM&Aすることで市場シェアを上げることで交渉力を高めることができますし、垂直統合を行えば円滑な取引ができることが可能になるでしょう。
下請けいじめに悩んでいる方は、この記事を参考にしてみてください。
またM&Aについてご関心ある中小企業の経営者の方はお気軽に弊社までご相談ください。
出典
: 中小企業庁:下請かけこみ寺 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kakekomi.htm
: 裁判所:企業間取引等調停 https://www.courts.go.jp/tokyo-s/adr/kyougi/
: 公正取引委員会:下請取引の適正化についてhttps://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/nov/221125.html
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